私の彼氏さま!!
episode7:自覚する気持ち
「うわー…その女、性格悪っ」
そこまでする壱条も壱条だけどね、と付け足しながら天井を仰ぐ愛羅。
「で。汐音はどう思った?」
「私は…」
あの2人を引き止める気は無い。
責めようとも思わない。
けど、
未だに会ってるって聞いた時、
胸がチクチクして、
鼻の奥がツンとして、
もう私の事は忘れたんだと思ったら、
なんだか…
すごく、悲しかった。
もうあの温もりに包まれる事はないんだと
思うと…
秋くんの隣は、もう自分の場所ではないんだと考えると…
自分を保っていられそうになかった。
けれど何よりも、
自分から別れを告げたのに、こんな事を思ってしまう自分自身に嫌気がさした。
「…わから、ない」
「んー、そっか。
無理に聞き出そうとは思わないよ。
でもね、汐音。
もう答えが出てるのなら、行動は早目に起こした方がいいよ」
「…」
「無理に自分の気持ちに嘘をつく事はしなくていいの。
自分自身に素直になりなよ」
「うん、ありがと」
愛羅はそう言ってくれたけど、
今はこの気持ちについて…
今後のことについて、何も考えたくなかった。
頭の中でぐるぐると渦を巻くように回る
自分の想いに、頭が痛くなって何がなんだか分からなくなってくる。
「ごめん愛羅、私、もう寝るね」
「分かった。…あ、ご飯は?食べない?」
動きやすい服装に着替えると、
化粧も全て落として布団を敷く。
今日はお風呂入らなくていいや…。
夕樹くんちで入ったからいいよね?
「んー…、お腹減ってない」
「そっか、了解」
「ごめんね愛羅」
「いいよいいよ。
…あ!中山との事については後日たっぷり聞くからね。
とりあえず今日はゆっくり寝な」
「もうっ、愛羅ってば…。
ありがとう、おやすみ」
「おやすみ!」
ニカッと白い歯を見せて笑う愛羅。
それを見てほんの少し、心が穏やかになるのを感じた。
寝室の灯りを消して布団に潜ると、
たちまち眠りに誘われる。
その傍ら、
「こんな辛そうな汐音、見てらんないよ…」
と、顔を覆って涙を流しながら愛羅が呟いたのを、私は知らない。