私の彼氏さま!!
その時、誰かの携帯が鳴った。
「あ。ごめんうちだわ…ピッ もしもし?」
『ーーー、ーー?』
「ううん…汐音の話だけ」
『ーー、ーーー』
若い男の人の声。
そういえば、
最近、1学年上の彼氏ができたって話してた
なぁ…。
瑠美香ちゃんの彼氏とは真逆で、インテリ系の男子なのだとか。
ちなみにその彼氏、ここの生徒ではないらしいから他校って事になるね。
だから、恐らく電話の相手は彼氏だろうと私は予想。
携帯からほんの少し声が漏れて聞こえる。
「…え、どういうこと??」
『ーから、ーーーる、ない…』
「うん、うん…分かった、じゃあまた」
10分くらいで電話を終えると、愛羅は瞳を泳がせた。
それはまるで何かに迷っているみたいで。
「汐音、」
掠れた声で静かに言った愛羅の口から出てきた言葉は私の思考を止めるのには十分すぎた。
「壱条は…間違ってなんかなかった」
「どういう、こと?」
俯きながら話す愛羅と、突然の言葉に戸惑っている私と、私たちの会話を黙ったまま聞いている夕樹くん。
クラスメイト達は楽しそうに話しているのに、私たちの所だけは切り取ったかのようにしんと静まり返っていた。
「壱条が昔からモテてたのは知ってるよね」
「う、ん」
「あいつ、高校の時にある女子生徒にストーカーされてたんだって。
その人は壱条に告白してフラれたんだけど、それでも好きだからって付き纏ったらしいの。でも高校を卒業したら合わなくて済むからって壱条は我慢してたらしい。
だけど、」
「…だけど?」
1度、口を閉じる愛羅。
そして机の上に置いてあったコーヒー牛乳を二口飲むと改めて話し出した。
「再会してしまったのよ。
この大学で」
「…でも、それと私たちと何の関係が?」
すると、がしっと私の肩を掴んで大きく揺さぶる愛羅。
「その人は…壱条と寝た人よ!」
「…え?」