エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
ついため息をつきそうになったそのとき、「おかあさーん」と言いながら、秀一郎がやって来た。

「なあに?秀一郎」
「今、善さんと話してるんでしょ」
「・・うん」
「僕も話していい?善さんと約束したから」
「え?“約束”って・・・?」

私が知ってる限り、善と秀一郎が二人きりでしゃべったことはないはず、なんだけど。

「このまえもらったプレゼントに書いてあったよ」
「あ・・・・・・」

そうだ。
プレゼントの一つの中に、ライズのメンバー4人のサイン入りTシャツがあった。
そこに、ひとりひとりから秀一郎へ、メッセージが書かれてて・・・。

『退院したら、秀の元気な声を聞かせてほしい』

ガッシリした体躯に合った力強い筆跡で、善はそう書いていたよね。

・・・やられた。

私は今度こそハァとため息をつくと、苦笑を浮かべながら、スマホを秀一郎に渡した。

< 100 / 183 >

この作品をシェア

pagetop