エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「俺だってどの選択がみんなにとってベストなのかは、ぶっちゃけ分かんないよ」
「この前は、あんな自信満々に“みんなにとって最高の答え”を言ったくせに」
「男って見栄っ張りだから、自信なくてもありそうに見せることが、勝負時には必要なんだよ」
「すごい理屈」と言いながら、私の顔には笑みが浮かんでいた。

「結果どうなるかは、誰にも分かんねえんだから、“何を”とか“どれを選ぶか”じゃなくてさ、“結局これを選んでよかった”と思えるように努力すればいいんじゃねぇの?それが“最高の答え”だと俺は思う。少なくとも、“あんとき止めときゃよかった”って後悔することはないだろ?」

あぁ、善のスピーチに、また私の心がグラッと揺れる。

「どういう形であれ、俺には息子がいると分かった。だったら今後、俺は息子にはかかわる。それが俺の意志だってことは覚えておいてほしい」
「・・・分かった」
「アキちゃんは?どうする?」
「わたし・・・は・・」

私は、秀一郎の視線から逃れるように、クルッと後ろを向くと、「あなたの番号、拒否解除する。じゃ」と小声で言うと、サッサとスマホを切った。

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