エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
・・・まだへたり込んでてよかった。
もし立ったまましゃべってたら・・・今、へたり込んでいた。

「し、しゅういちろ・・・なんで・・・」
「善さんが僕のドナーになってくれたって、おじいちゃんとおばあちゃんが話しているのが聞こえたんだ。それが本当か、聞きたかったし。もし本当だったら、ちゃんとお礼も言いたかったんだ。それに、他人より血のつながりがある人の方が、HLA型が適合する確率が高いから、お母さんは、“お父さんは死んだ”って言ったけど、もしかしたらって思って・・」
「な・・・」

なんてこと。
秀一郎は、自分の病気について、そこまで知識を仕入れていたの・・・?

呆然としている私に追いうちをかけるように、「あのー、アキちゃん。“そのこと”については、さっき俺が秀に話したから」と言う善の声が、私の耳にハッキリ・・・聞こえてしまった。

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