エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「俺としては、アキちゃんにはしばらく仕事はしてほしくない。秀は転校することになるし、環境も変わる。お父さんとお母さんから離れることにもなる。だから、アキちゃんには家にいてほしい」

秀一郎が学校から帰ってくる家に、母親の私がいること。
「ただいま」と言う秀一郎に「おかえり」と言って出迎える私。
それは今まで両親の役目だったけど・・・本当は私がそれをしたかった。

「でも、善・・・」
「金のことなら心配しなくていい」
「それは心配してない!」
「なら、“でも”はなし」
「ぜん・・・」
「秀は、引っ越したり転校するのは構わないんだろ?」
「仕方ないよね」

と言う息子は、至って冷静・・・いや。
まだ心がグラグラ揺れているのは、この場では私一人だけかもしれない。

一体私は、何に迷っているんだろう。

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