エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
・・・温かい。そして逞しい。
私・・・善に守られてる・・・。

唇を噛みしめて、両目をつぶった瞬間、私の目から涙がスーッと流れ出たのを皮切りに、私は善にしがみつくように彼の腕に手を置いて、シクシクと泣き出した。

善と別れて、秀一郎を妊娠して、出産して。
家族に助けられて一生懸命秀一郎を育ててきたこと。
秀一郎が大きくなって・・・病気になってしまって、善と再会せざるを得なかったこと。

嬉しかったこと、悲しかったこと。
押し寄せてくる不安。
色々な気持ちが一気に押し寄せて、私の中でゴチャ混ぜになっている感じで。

とにかく今は・・・泣きたいから・・・善の胸の中で泣かせてほしい。

「ぅ・・・善・・・」
「大丈夫。俺ら、絶対上手くいく。いや、上手くいかせよう。3人で」
「・・・ぅん」

こうして11月20日、私は善と入籍をしたけど、家族3人で一緒に暮らし始めたのは、それから1ヶ月と少し経った、12月26日からだった。

< 149 / 183 >

この作品をシェア

pagetop