エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「話して。アキちゃんが何を思ってるか」
「う・・うまくいかない。私たち・・私、どうしたらうまくいくのか、もうわかんない。うぅ。やっぱり、秀一郎がいるからって理由だけで、結婚とか・・・。そもそもそれが間違いだったのよ」
「何言ってんだよ。俺たちが結婚した理由は、それだけじゃないだろ?」
「それだけよ!あなたは私のことを好きだって言うけど、私たちの間に恋愛感情なんてない!」
「・・・ぁあ?」
「小春ちゃんや日香里ちゃんたちは、お互い愛し合って結婚したけど、私たちは・・・違う。だから私、もうやっていけない。ここを出る」
「は?出るって、秀は」
「・・・分かんない。でも、わたし・・・ここ出ても、帰る場所がない。行くあてもない。私、の居場所って、どこにも・・・どこにもない、の」

・・・ずっと心の内に溜めこんでいた思いを、やっと善に言えたのは、もうここを出るって覚悟を決めたからかもしれない。
とにかく、善に言ったことで安堵した私は、善の逞しい胸を借りて、派手に泣いた。

< 164 / 183 >

この作品をシェア

pagetop