エチュード ～即興家族（アドリブファミリー）～

でも善は笑うのをピタッと止めると、「アキちゃん」と言った。

「はい」
「仮に秀が・・俺らに子どもがいなくても、アキちゃんと結婚したいと思ったよ。マジで」

善の声はとても真剣で、それでいて、私の髪を梳くように撫でる彼の手つきは、とても優しくて・・・涙が出そうになる。

「違う人間同士が一つ屋根の下で一緒に暮らしてんだから、違う意見が出て当たり前だ。だがそういう時は、どっちかがガマンして耐えるんじゃなくてさ、互いに思ってることを言い合って、どのやり方がベストなのか、俺ら２人で、時には秀も入れて３人で考えて決める。そうすれば、俺らの夫婦関係とか結婚生活とか、家族関係とか、そういうのが上手くいくんじゃないかと俺は思うんだ」
「うん。そうだね」と私は言いながら、コクンと頷いた。