エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「お待たせしました。私が社長の梶原です。あなたのお名前は」
「あ・・・武田朗子(あきこ)と申します。突然こちらに押しかけて、本当に申し訳ございません」と私は言いながら、深々と頭を下げた。
「うーん。見たところ、武田さんは典型的な追っかけって感じでもない、誰にも迷惑かけるようなマネをしない、至ってフツーの女性に見えるんだけどなぁ。一体何の用?」
軽くあしらうように言う社長さんの口調は優しいんだけど、迷惑してることをしっかりアピールしてくるのは・・・迷惑かけているのは事実だから、仕方ないか。
「あの・・・ここではお話できません」
何しにここまで来たのか分からない私を、事務所内に通すわけにはというより、通すつもりはないんだろう。
私たちはいまだに、ガードマンがすぐ近くにいる受付エリアの隅で、「立ち話」をしている状態だ。
「とても大事なことですし、善のためにも、なるべく他の人たちには知られたくないことなので・・・」
「あ、そう。息子さんの命がかかってるって、さっき言われたそうだけど」
「はい」と返事をした私は、俯いた。
病院のベッドに寝ている秀一郎の姿が瞼の裏に蘇った私は、泣きそうになった。
本当は、今すぐ秀一郎のところへ戻りたい。
でも・・・ここでくじけちゃいけない。
「あ・・・武田朗子(あきこ)と申します。突然こちらに押しかけて、本当に申し訳ございません」と私は言いながら、深々と頭を下げた。
「うーん。見たところ、武田さんは典型的な追っかけって感じでもない、誰にも迷惑かけるようなマネをしない、至ってフツーの女性に見えるんだけどなぁ。一体何の用?」
軽くあしらうように言う社長さんの口調は優しいんだけど、迷惑してることをしっかりアピールしてくるのは・・・迷惑かけているのは事実だから、仕方ないか。
「あの・・・ここではお話できません」
何しにここまで来たのか分からない私を、事務所内に通すわけにはというより、通すつもりはないんだろう。
私たちはいまだに、ガードマンがすぐ近くにいる受付エリアの隅で、「立ち話」をしている状態だ。
「とても大事なことですし、善のためにも、なるべく他の人たちには知られたくないことなので・・・」
「あ、そう。息子さんの命がかかってるって、さっき言われたそうだけど」
「はい」と返事をした私は、俯いた。
病院のベッドに寝ている秀一郎の姿が瞼の裏に蘇った私は、泣きそうになった。
本当は、今すぐ秀一郎のところへ戻りたい。
でも・・・ここでくじけちゃいけない。