エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「で?善に何の用」
「それは・・・本人に会ってから話したいので・・・。あの、社長さんも同席していただいて構わないので、善・・さんに連絡を取ってもらえませんか」
「あんた、善の番号知らないの?それとも拒否設定された?」
「知りません。知ってたら、ここには来てません」
「まぁそうだろうな。で、息子の・・秀一郎くん?がホントにいるって証拠は」
「え?証、拠?」
「写真とか。見せて」
「あ・・・えっと、とりあえずここに来なきゃと思って来たから・・・あの、何ヶ月か前の写真でよければ」と私は言いながら、スマホで撮影していた秀一郎を社長さんに見せた。
あの頃の秀一郎は元気いっぱいで。
活発な10歳の男の子で・・・。

「なぜ秀一郎が」という思いが、私の心の中でまたうごめき、渦巻く。

「・・・思いたくないんだが。似てるな」
「は・・・?」
「よし」と社長さんは言うと、やっとスマホを取り出してくれた。

< 29 / 183 >

この作品をシェア

pagetop