エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「・・・あーもしもし。善いる?・・・・・・どれくらいで終わる・・・分かった。終わったら事務所に来てくれ・・・・・俺のところ。善は必須。他は・・・ま、来たければ来ていい。と言えば、あいつら来るよな。でもま、たぶん今後の活動にも影響出るから、みんなも知っといた方がいいだろう」

「じゃ」と言ってスマホを切った社長さんが、私を見た。
社長さんからは、もう怒りを感じないことにホッとする。

「今あいつら曲作り中でさ。30分くらいでこっちに来るから」
「あ・・・りがとう、ございます。ありがとうございます」
「ま、礼はいいから。あんまり大きな爆弾は落とさないでほしい」
「・・・すみません。ご迷惑をおかけして」

平穏で充実した日々が、どんどん失われていく。
秀一郎と私、そして・・・善の。

善に秀一郎のことを話すことで、父親の存在がなかったことには、もうできない。

< 30 / 183 >

この作品をシェア

pagetop