エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
どこから始めたらいいんだろう・・・。

正面に座っている善の顔を直視できない私は、俯いたまま両手をグネグネよじって考えていた。
でも・・・考えたところで、時間が過ぎていくばかりだ。
無駄な時間が。

だったら、言いたいことを・・・言わなければいけないことをちゃんと言って・・・。

「アキちゃん」と呼びかける善の声は、私を責めてもなくて、苛立ちもしてなくて、とても優しく聞こえた。
善も、他のメンバーも、小池さんも社長さんも、他に予定があるのを放り出して、私のために来てくれて、場を設けてくれたんだ。

意を決した私は、顔を上げて、向かいに座っている善を見た。

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