エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「アキちゃん、車で来た?」
「ううん。電車」

疲れが溜まっている状態で、片道1時間近くかけて車を運転するのはキツいと思った私は、電車で来ていた。
それに、事務所の住所は分かっていたけど、駅からタクシーで行った方が、より早く、確実に到着できると思ったし。

「送ろうか」
「ううん。電車の切符、もう買ってるからいい。あの、善」
「ん」
「・・・ありがとう。本当に、ありがとう・・・」
「礼を言うのはまだ早いって。でも」と善は言いながら、私の目をひたと見据えた。

「俺、できるだけのことはする」と善に言われて、私はまた、泣きそうになってしまった。

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