エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
・・・遅い。
善が来ると言った時間から、もう15分経っている。

どうしたんだろう。
急な仕事が入った?
それともファンにつかまった?
もしかして・・・土壇場で「やめた」とか・・・。

善に限ってそれはない!

お願い、善・・・ここに来て。
秀一郎を助けて!

私の必死の願いが通じたのか。
それからすぐ、一台の車が停まったと思ったら、善がおりてきた。

「・・・ぁ・・・」

善、来てくれた・・・。

ホッとしたのもつかの間、善は私を素通りして、ズンズン歩いて行く。

え?何、これ。
どういうこと・・・?


「ぜ・・」
「大丈夫だと思うが、念のため、もう少し他人のフリして」と善に小声で言われた私は、かすかに頷くと、善とは少しだけ距離を置いて、病院内へと入っていった。

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