エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
それからすぐ、善は秀一郎に会いに行った。
善はガラス張りの壁の外から、無菌病室にいる秀一郎を、秀一郎に気づかれないよう、じっと見ている。
今は兄が中にいるため、これ以上お見舞いの人は入れないタイミングに、私は少しホッとしてしまった。
でも、食い入るように秀一郎を見ている善の横顔は、とても切なく見えて・・・。
「俺に似てる」
「え?」
「手。おっきいところとか、指の形とか」
「あぁ・・そう、かな」
「目元も俺に似てる」
「それは・・・うん、そうだね」
特に笑ったときに少し下がる目尻が。
11年経って、善にはそこにできるしわが、濃くなった気がする。
「行こう。秀(しゅう)に気づかれる前に」と言って歩き出した善の、硬く握られていた大きな手に、触れようとしたけど・・・。
結局私の手は、彼の手に触れることなく、行き場をなくしただけだった。
善はガラス張りの壁の外から、無菌病室にいる秀一郎を、秀一郎に気づかれないよう、じっと見ている。
今は兄が中にいるため、これ以上お見舞いの人は入れないタイミングに、私は少しホッとしてしまった。
でも、食い入るように秀一郎を見ている善の横顔は、とても切なく見えて・・・。
「俺に似てる」
「え?」
「手。おっきいところとか、指の形とか」
「あぁ・・そう、かな」
「目元も俺に似てる」
「それは・・・うん、そうだね」
特に笑ったときに少し下がる目尻が。
11年経って、善にはそこにできるしわが、濃くなった気がする。
「行こう。秀(しゅう)に気づかれる前に」と言って歩き出した善の、硬く握られていた大きな手に、触れようとしたけど・・・。
結局私の手は、彼の手に触れることなく、行き場をなくしただけだった。