エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「それより、秀の命救うことが先だよな」

・・・嬉しかった。
お金のことより、その言葉と思いの方が、私にとってはとても・・・とても大事だから。

でも、そう言われると・・・もうダメ。

抑えていた涙が一筋、私の頬を伝っていく。
私は体を震わせながら、何度も頷く私の手を、善が優しくにぎってくれた。

「大丈夫。あいつは助かる。絶対元気になるよ」
「・・・ん。ぅ、ん・・・ありがと・・・ぜん・・・」

善と別れて11年。
それぞれ別々の道を歩んでいた私たちが、秀一郎という息子を通して、再び絆がつながった瞬間だった。

それでもやっぱり、11年という歳月は、確実に経っていて・・・。

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