エチュード ～即興家族（アドリブファミリー）～

私をなだめるような善の言い方に、ますます苛立つ。
でも善に対してより・・・自分に一番苛立つ。

「・・・・・ごめ、ん・・。善、あなたは芸能界で活躍してる有名人で、私は、私立高校の一事務員で・・・違うのよ。立場や目立つ度合いが。だから・・私たちにかかわるのは、もうやめて。私ももう、あなたにメール送るのやめるから」
「は？何言って・・・」
「電話もかけないで。そしてもう二度と会わないから。秀一郎のところには絶対来ないで！」
「嫌だ。アキちゃんに迷惑かけたことは事実だし、それはホントに申し訳ないと思う。だがな、俺はやっと息子の存在を知ったんだぞ。これからなのに、ここでまた無関係になるとか、そんなこと・・・俺は絶対嫌だ！」
「私だって、あなたにこれ以上生活のペースを乱されるのは嫌なのよ！それに、あなたが秀一郎にかかわりたいと思っても、他の人たちはどうなのよ？あなたの彼女は？私は？秀一郎自身の人生にもかかわることなのよ！ねえ、善。私・・・より、秀一郎のことを大事に思っているなら・・・おねがい。私たちをそっとしておいて」

「アキちゃん！」という善の呼びかけが聞こえたけど、私は赤いボタンを押して、会話を終わらせた。
そして善の番号を拒否設定すると、スマホをオフにした。

やっぱり・・・善が退院した時点で、キッパリと連絡を絶っておけばよかった。
と後悔しても、時間は容赦なく過ぎていき・・・。