エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「なぁアキちゃん。俺たち、嫌いになって別れたんじゃないだろ」
「そうね。あなたの都合で別れたのよね。そしてあなたが私に“プロポーズ”をしたのも、やっぱりあなたの都合なのよね」
「そんなんじゃねえって。これは俺なりに熟考して導き出した、誰にとっても最高の答えだ。こうこちゃんと別れたことも、こうこちゃんが妊娠してないって分かるまで、アキちゃんのところへ来なかったことや、連絡しなかったことも・・・」
「私が拒否設定してるからでしょ」と私が言うと、善は鼻で笑った。

何よ、その余裕は!
なんかムカつくんだけど!

「俺にはそういうの、通用しねえから」
「あなたねぇ・・・」
「俺には今、つき合ってる女はいない。アキちゃんだって付き合ってる男はいないんだろ?」
「そ・・・それが?何なのよっ!」
「俺たちが結婚できる、十分な理由」

善ってここまで・・・強引な上に、楽観主義者だった、かしら。
この人とつき合った3ヶ月の間、ここまで大きな言い争いをしたことないから・・・。

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