エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「あなたは・・・秀一郎がいなければ、こんなこと・・・私に言おうとも思わなかったでしょう!」
「思いつきはしなかったかもな」
「一体、これのどこが、“誰にとっても最高の答え”なのよ!少なくとも私には・・・秀一郎にとっても、全然“最高”じゃないわよ!」
「試しもしないで言いきるなよ。それに俺は、今後も秀とかかわる。そこは曲げない。ということは、アキちゃんにもかかわるということだ」
「なん・・・善。おねがいだから・・・。私たちのことを考えてくれているなら、これ以上私たちにかかわるのはやめて!」と私は言うと、善の手をふりほどいて、病室の方へ歩きだした。

「アキちゃん!俺は諦めないからな!」という善の声を背中に聞きながら、一歩歩くごとに、善と交わしたすれ違いの熱い議論を心から締め出して。

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