一度でいいから好きだと言って


ひと月なんてあっという間で、斯波さんが研究室に泊り込むことも滅多になくなった。

こうやって斯波さんのいない朝に慣れていくんだなと思う。

恋愛対象外とか言いながら、ホントは少し惹かれていた。自覚しても遅いんだけれど・・・・・。




今日で最後という日。

朝、出勤するとソファーにまた斯波さんが寝ている。

明日からは朝だけじゃなくてずっと、この人の姿を見ることはないんだ・・・・・そう思うとなんだか胸をキュッと絞られるような気がした。


だから



魔が差したんだと思う。





彼の唇に触れるか触れないかギリギリのキスをしてしまった。


「お餞別ですよ・・・・・」
彼の唇の上でそっと囁く。




「足りひんな」


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