一度でいいから好きだと言って
もう自分で自分を持て余して、どうしたら幸せになれるのかも分からなくなってしまった。
陸に会ったらどんな顔をしようか、そんなことを考えながら院長の自宅を訪ねる。料理を作る翠ちゃんの手伝いをするために少し早めの時間にした。
「ちはやさん、助かります」
キッチンで忙しく動き回っている翠ちゃんが嬉しそうに言う。
「茜ちゃんは?」
「今、和《なごみ》におっぱいやってます。リビングにいてるしちょっと顔を見てやって」
キッチンの隣のリビングに続くドアを開けると、茜ちゃんが和ちゃんを縦に抱いて背中を叩いている。
「おっぱい終わってゲップ?」
「ちはやさん、ご無沙汰してます」
お腹が一杯になって満足そうな顔をしている和ちゃんの顔を覗きこむ。