一度でいいから好きだと言って
肩まで伸ばした髪をハーフアップにし、第二ボタンまで開けた白いシャツにデニムをはいて、ポケットに手を突っ込んで立っている男。
「ただいま」
5年ぶりの再会だというのに、さっきコンビニに行って帰ってきましたーみたいな気軽さだ。
「お帰りなさいませ、おぼっちゃま」
深々とお辞儀をする。
「・・・・・オヤジは?」
「お約束がございましたか?医師会の会合に出掛けてらっしゃいますが」
「お約束はないけどね」
と言いながら部屋を横切りソファーに座って足を組む。
「ちはや、コーヒー入れて。アメリカから飛行機で着いてそのまま来たんやからちょっとはいたわってよ」
「かしこまりました、おぼっちゃま。それからちはやではなく兼崎です」