一度でいいから好きだと言って
やがて柔らかい舌が耳をなぞり、微かな声で陸が囁きを漏らす。
「ちはや、愛してる・・・・・」
わたしの欲しかった言葉を長い年月を経てようやく陸から手に入れた。
気恥ずかしさとほんの少しの後ろめたさを抱え、陸と2人で皆がいる座敷へと足を踏み入れる。
わたし達を見た途端、翠ちゃんが嬉しそうにした。
「ちはやさん、陸さん、おめでとう」
「主役はオレらのはずやったのに陸に持ってかれた」
海斗くんの言葉に皆が笑顔になる。
「もう1人、また孫が抱けるんやなあ。今度はどっちやろ」
院長の手から陸が和ちゃんを取り上げた。まだ首が完全に据わっていない和ちゃんを器用に抱っこし腰をおろす。
「絶対女の子やな」