一度でいいから好きだと言って


「かったいなあー。」

「勤務中ですし雇用主のご子息ですから」

背中を向けてコーヒーメーカーをセットする。

大丈夫。
わたしはもうあの頃みたいな小娘じゃない。


斯波 陸斗
わたしの初めての男。

わたしの未練。

わたしの後悔。



「なあ、なんでそんな結婚したいの?そんな結婚願望強かったっけ?」

コポコポとコーヒーメーカーが音をたてて

部屋の中にコーヒーの匂いが充満する。



この男と密室に2人きりは息が詰まる。


「・・・・・結婚願望やなくて子供が欲しいのよ」

「別に今30代後半で初産なんて珍しくもないやろ」

「一人だけやなくて、産めるだけ。生産年齢のリミットがただでさえ近いから焦ってるんです」
< 4 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop