一度でいいから好きだと言って


「・・・・・陸の両手の指も借りなきゃ自分の指だけでは足りひんくらい」

「ふうん・・・・・」

大して面白くもなさそうに陸が返事をする。

なんで急に抱くのよと聞きたいのに聞けない。この男のことは全部、記憶の奥底に鍵をかけてしまいこんだはずだったのに・・・・・。


ソファーから立ち上がろうとしたとき、下半身から何かが流れでる感触にはっとする。

「陸、まさか・・・・・」

お腹に手をやり、陸を睨みつける。

「ああ、ごめん。流れ出た?生産活動やって言うたやろ。もちろん避妊なんかしてないよ」

「陸っ!!」

「見事実を結んだら教えてよ。責任とるからさ」




“責任は取るよ”


またこの男はわたしの欲しい言葉をくれない・・・・・・・・・・。

もうたくさんだーーーーーーーーー。



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