一度でいいから好きだと言って
過去


女子大を卒業してわたしはゼネコンに就職した。なのにまさかの不況で就職して3年で会社が倒産。そんなときタイミング良く父親が持ってきた知り合いのK大の工学部建築学科の教授が研究室の秘書を探しているという話に飛びついた。優秀な院生でも捕まえて、早く結婚してくれたら・・・・・という父親の目論見も透けて見えたけれど、無職になるのだけは嫌だったので渡りに船だった。



朝、出勤すると一番にすることは、ソファーを確認すること。

週2〜3回の頻度で研究室で徹夜をし、窮屈そうにソファーで寝ている男。

「斯波さん!おはようございます」

不機嫌そうに眉間にシワを入れるけれど、起きる気配はない。

「斯波さんてば!」

「・・・・・んー・・・・・」

京都に住んでいる人なら誰でも知っているような大病院のおぼっちゃまなら家に寝心地のいいベッドがあるだろうに、なんでわざわざこんな狭苦しいソファーなんかで寝ているんだろう。
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