旦那様にはハチ蜜を
怖いぐらいに容姿端麗で、財力も凛堂グループなんて火じゃない。

それに風の噂では「学力の方もそれ相応のモノ」とか。


「輝かしい未来を約束された、満神楽財閥の坊ちゃん...かぁ」


容姿端麗、文武両道、更に財力も地位も上流階級ときた。

そんなスペックを持ち合わせた彼が、このパーティに来るのはただの暇潰しでしかないだろう。


学園の合間を縫って、とか。

勉強に疲れたから息抜き程度に、とか。


そんな理由でも、彼がここに来たらここはもう彼のテリトリー。


パーティ主催者の佐伯(さえき)様でも、彼のテリトリーでは犬同然。

じゃあ私達は、彼にとって...。


「やぁ凛堂。君も着ていたんだね」


100%スマイルをして、当然の様に女性陣を押し退けて走り寄って来る彼。

そう、噂の彼。


「渚君、ごきげんよう」


「ごきげんよう、今日は御父様と御母様は一緒に?」


「着てるけど、挨拶ならしなくても大丈夫だよ。もうそろそろ帰るところだから」


「それは残念。また近々伺って挨拶させてもらうよ。では、またどこかで」


笑顔で手を振って、また何処かに行ってしまう彼を目で追った。

心臓が痛い程ドキドキと鳴り響く。

体中からは湯気が出そうな程熱い。


噂の彼は、私の幼馴染。

それでいて、10年越しの片想いの相手。


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