絶対に離さないヨ。僕だけのお姫様
いつもどおり
「大丈夫ですか?」
優しそうな声と 、 この土砂降りの雨音が入り混じる。
僕と同じ 制服だ。
人見知りの僕は、 彼女の顔を見るや否やすぐに目を逸らしてしまった。
そんな僕に、 彼女は何も言わず ただ傘を差し隣に佇んでいた。
一時間経っただろうか。 いや、 それ以上経っただろう。
少し笑みを浮かべながらも、 僕に合わせて無言で居てくれていた彼女。
『名前は何ていうの?』 『何歳なの?』
話題を振ろうと思った。
思っただけで、 口からその言葉を発することはなかった。
そろそろ迷惑だと思い、 その場を立ち去ろうとした瞬間。
雨が止み、 太陽が姿を現した。
「 あれ、 虹かな? 」
目の前には七色の虹が広がっていた。
僕は あまりの綺麗さに声を出してしまった。
「 綺麗だ 。」
彼女は僕の顔を見て、 とても嬉しそうに笑った。
「 やっと 笑ってくれたね 。」
そう言って傘を閉じた。
彼女の笑顔は、 僕の心の扉をノックするかのように 明るかった。
初めて向けられる笑顔に、 僕は好意を抱いてしまった。
この時点で僕達は、 結ばれる『運命』だったのだ。