絶対に離さないヨ。僕だけのお姫様
 
 「この前の方ですよね?」


 幻覚。 だと思った。

 まさか会えるとは。 そして彼女から話しかけてくれるとは、 夢でも見てるのじゃないかと思うくらい思いもよらないことだった。

 僕は少し固まったまま、 その綺麗な顔を 数秒見つめていた。

 彼女は不思議そうな顔や、焦ったような顔をする。
それを見ているのがとても 幸せに感じた。

 「あの...私、人違いしてしまったようです。 すみません。」

そう言って、 彼女は去ろうとする。

 やっと会えたのに、話しかけてくれたのに、 それだけで十分だと思ってしまう僕を押し切って、 勇気を振り絞る。

 「いえ。 人違いではありません。 少し緊張していたので、すみません。」
一礼をして、顔を上げる。

 今の僕は どんな顔をしているだろう? 変な表情になっていないだろうか。

彼女は、僕の言葉を聞き安心したのか、ふうっと溜め息をつく。
「 良かったぁ...。 人違いだったらどうしようかなって思っちゃいました。
 また会えて良かったです!」

 眩しい笑顔。 飛び跳ねるその無邪気さ。 

全てが僕にはない、 とても羨ましい事だった。
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