アーバン・ウォーリア


皿を洗い終わり俺は自室に入った。
床には教科書やらなんかの回路やら作りかけのプラモデルが転がっている。部屋の隅には黒い大型コンピューター。そんなものを避けつつ俺は自分のデスクに座る。
机には新しい空中投影型のディスプレイのデスクトップPCと古すぎて売ってもお金にならないようなノートPCが置いてある。
俺はノートPCを立ち上げた。貰い物だが長年愛用しているためこいつには愛着がある。今でも動画を見たりメールをするのはこのPCだ。
早速ネットでも見ようかと思ったが、ふとメールが届いているのに気づいた。内容は

××××××××××××××××××××××××××××××××
タイトル・お前は狙われている。
××××××××××××××××××××××××××××××××

気をつけろ。お前は知ってしまった。

××××××××××××××××××××××××××××××××

「なんだこれ?」
俺は思わず言ってしまう。
どうせ悪戯だろう。だって俺みたいなのが狙われる理由が………………あった。
まさか、あのマシンウォーリアか?
そういえば、向かいのマンションにおととい誰か入ったらしい。もしかしてこのメールを送ったのはあのストーカーなんじゃないか?
こんなことになると何もかもが疑わしくなる。頬を冷や汗が流れる。だが、不思議と怖くない。いや、むしろワクワクしている。俺に秘めたる厨二魂が疼きだしてきた。思わず雄叫びをあげたくなってきた。
「フッフッ……。面白い!!ネットで虚勢の光と呼ばれたこの我セロ・アグマが受けてたとう!!」
ちなみにセロ・アグマというのは俺のネトゲなどでのアカウント名だ。虚勢の閃光という異名(自称)だが、だいたい虚光と略されてしまっている。
ちなみにこれでセロと読む。まあ、俺はネトゲに自信がある。まあ、相棒に手伝ってもらっているお陰だが。俺は外付けマイクに向かって叫ぶ。
「ライズ!」
『およびですか?マスター』
合成音声が応答する。
こいつは俺の相棒。自力で作り上げた人工知能である。
俺がネトゲでトップランカーであるのもこいつの操作支援があるからだ。かなりの性能でハッキングなども余裕でできる。
ネットからの遠隔操作も可能で、端末や、俺のマシンワーカー『ラスタ2』からでもアクセスできる。
さらに無人でのマシンワーカーの操縦を任せることだってできる。俺は相棒に指令を下す。
「明日俺をつけていたストーカーを特定する。端末に常にアクセスしたままで頼む。カメラは常にオンだ。したらあちこちのとんでもないデータベースにアクセスしろ。少しでも黒い噂があったら逃すなよ!」
『了解です』
相変わらず飾り気のない淡々とした口調だ。なんか面白いギャグ喋る機能でもつけるかな……。
「おにーちゃん♪何してるの?」
「なっ!?美香!!いつの間に!!」
いつの間にかいた後ろから美香が声をかけてくる。シャワーを浴びた後なのだろう。髪はすこし濡れている。首にはタオルを巻き、パジャマ姿だった。いつの間に来たんだ?というか聞かれてないよな……今の話。
「大声でなんか叫んでたあたりから全部聞いてたよ」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!なんたる失態だ!!作戦実行前に知られてしまうとは!!実に恥ずべき行為!!
「にしてもストーカーってどういうこと?まさかお兄ちゃん……!モテないからって引くわー」
美香が冷たい視線を投げかける。俺は何もしてねえよ!俺変態じゃないからな!もう慣れてるよ!伊達に、彼女いない歴と年齢が同じじゃぁないよ!!
「ちげぇよ!ストーキングされてたのは俺だ!」
俺は全力で否定する。ありえないが事実なんだ。信じてくれ!
「まあ、お兄ちゃんがそんなことしたらまずヘマして今頃牢屋の中よね……」
え、なんか酷くない!?疑われてないのはわかったけどさぁ……。
『マスター、妹様のいっていることはごもっともです』
「ライズお前まで……」
俺氏完全孤立。凹むとかじゃなくて、もう酷いよ。俺がしょぼくれてる間に美香はPCをいじりメールを覗く。
「これって……脅迫!?何かしたのお兄ちゃん!?」
美香が驚愕した声で言ってくる。まあ、何かしたというよりは見たんだが……。取り敢えず話しとくか。仕事中倉庫にいる親父に弁当渡すときにどうせ見ちまうだろうし。
知らないよりは知ってる方がましか。
「なあ、美香。マシンウォーリアって知ってるか?」
「ロボットだっけ?兵器用の。前話してたよね。それがどうしたの?」
「それ、運び込んで今家にあるんだよ……」
しばらくの沈黙。誰一人として喋らぬ空気が30秒ほど。そして、
「そりゃ、追われるよ」
当たり前だよな。
「まあ、私には関係ないし、じゃあ、おやすみー」
もう新学期で疲れたのか美香は俺の部屋を出て行った。そしてその後俺は至って普通に風呂に入り寝た。
< 4 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop