素直になれない。
意外とみんな真面目に勉強している。
それはいいけど、
なんで俺の隣がこいつなんだよ。
どうせなら中村とか神崎の隣が
いいんだけどな。
「ねー奈穂。これわかんない。」
どうやら半田は中村にわからないところを
聞いているみたいだ。
どんな問題か覗いてみた。
なんだよ、そんなのも解けないのかよ。
俺も大して勉強できるわけではないが
このくらいなら解ける。
気づいたら半田が俺を見ていた。
「変態はこういう時も覗くんだね。」
「ち、ちげーよ。こんな簡単な
問題も解けないのかって
馬鹿にしてるとこだよ。」
そうだ、馬鹿にしているのだ。
これは覗きにはならないよね?
「なにそれ。なら教えてよ。
これくらい簡単なんでしょ。」
あれ?意外と素直に言う奴なのか。
仕方なく教えることにした。
「ここがこうなってこれを代入して…
ほら答えが出た。」
「ほんとだ。
あんた意外とできるんだね。」
「意外ってなんだよ。
半田よりは成績いいし。」
「う、うるさい!」
結局こうなるんだな。
雄貴が必死に止めにかかる。
なぜか中村と神崎が微笑ましく見てる。
「喧嘩するほど仲がいいって言うよね。」
神崎が急に言い出した。
やめろよ。俺こんなやつと仲良く
できる自信ないわ。
ただ、実は周りの男どもが
お前半田と仲いいんだなとか
変なこといってやがるし。
ほんとにやめてほしいよ。
「ホントだよな。和也、いいぞ。」
雄貴も便乗して言ってきた。
「一宮くん。ふざけたこと言わないで。
私には好きな…」
半田が動揺し始めた。
顔も真っ赤になっていた。
何やってるんだあいつ。
「咲ちゃん、好きな人いるんだよ。
でも話しかけられないんだけどね。」
中村が説明した。
好きな奴ねー。
ってなんで俺が半田の好きな奴なんか
気にしないといけないんだよ。
それから何故か半田の好きな奴の
話になってしまった。
どうやら2年のバスケ部の先輩らしい。
やっぱバスケ部はもてるのか。
俺もこれからバスケ部に入ろうか。
いやそんな馬鹿な話はやめよう。
俺のやり方で彼女を作る。
それがいい。
結局それから勉強せずずっと話していた。
気づいたら5時を回っていた。
「あ、そろそろこんな時間なんだ。
そろそろ帰らないと…」
中村が言った。
夜遅くなると親が心配するよな。
それなら帰ると神崎と半田が言った。
待てよ、俺が送ってた方が。
男ならやっぱそうじゃないと。
よし。
「暗くなると危ないし、
俺が近くまで送ってくわ。」
勇気を出して言ってみた。
「そうだね。じゃぁよろしくね。」
神崎が承諾してくれた。
やったな俺。さすがだ。
中村と神崎と帰れる。
クラスの男子の夢だなこれ。
半田さえいなければだけど。
こうして3人を送っていくことになった。