アジュールブルーに彩られ




『平成25年度第34回入学式を閉会致します。』


パチパチ、パチパチ




長ったるい校長の話も終わり
甘ったるい親子の感動も終わり
さっさとこんな息苦しいところから抜け出そう、とカバンに新品の教科書を詰め込む。





「いやぁ、マジよかった。お前と同じクラスで」

朔が安心したような顔をする
それが本音だろうが嘘だろうが構わない、があまり大声でそういうことを言うのをやめて欲しい


俺にはそういう言葉が痒くて
好きじゃない。





「なぁ、可愛い子結構多くね?」

「へー」

「連れねぇなぁ、モテるクセによぉ。」



仕方ない、
心底どうでもいいのだから

逆に感心する
どうしてそこまで人を求められるのか




今あるもので我慢できないのか。









俺には不思議で仕方ない








「俺、帰るわ」

「え?ちょ、友だちつくってこれから遊ぼうよぉ」

「だるい。」


後ろでえー、とか待ってー、とかぎゃーぎゃー騒いでいるのが聞こえるがシカトする。
俺がここで待ったとしたってアイツは俺が折れるまで同じことをいい続けるだろうから

ていうか、恥ずかしくねーのかアイツは。




チラリ、と一度振り返り
まだギャーギャー吠えてる朔を一瞥してそのまま行こうとした時何かにぶつかった


「きゃっ、」

「あ。」



目の前で転がったのは女子
ということは、ぶつかったのはこの人…


「悪い。平気?」

「あ、…だ、だだだいじょぶで、ごめんなさいっ」

“だ”が多い…

つーかよそ見してた俺が悪いのに申し訳なさそうに何度も何度も謝る
そんな彼女の姿を見ていたら、姉ちゃんの顔が浮かんだ



「くすっ」

つい、笑ってしまった。
笑ったあとですぐ後悔する
変な奴と思われたか…



「あ、あの…え、えっと…?」

顔を真っ赤にして
俯く彼女
あぁ彼女のことを笑ったと勘違いしてしまったのだろうか


「悪い、知り合いに似てたからつい。悪かったな」

「え、あ!こ、こちらこそっ」


ペコペコと最後まで頭を下げ続けた彼女
やっぱ、姉ちゃんに似てる…






だからか、

帰り道はずっと
今朝の申し訳なさそうにした姉ちゃんの顔が頭に焼き付いて離れなかった。







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