アジュールブルーに彩られ


“愛しい”

その衝動を抑えず、
ぎゅっと思いっきり抱きしめる。





「違うの。おねぇちゃん、感動しちゃったの。上手にかけたね、よしよし」

青の背中を優しくなでながら
精一杯の愛を与えるように
精一杯の言葉で彼の心を温める。

安心したのか、
しくしく、と泣き始める



こんなにも優しい弟を
こんなにも臆病にさせたのは…

そんなことを思っては
憎しみを募らせる
何も出来ない自分に
いらだちが募る





「ほらほら。泣き止んで、もうすぐ“あの人”が帰ってくるから…ね?」

そう言うとぴたりと泣き止む弟
その表情には不安と期待が混じってる




「ねぇ、これお母さんに見せたら喜ぶかなぁ?」

あぁ、どうか神様
この無知さをいつまでも奪い去らないで。

きっとこの文を見たら“あの人”は…




「…おねぇちゃんが見せておくから。ほら、部屋に行ってて」


時間を確認する
もうすぐで5時。

そろそろ、か



弟が階段を駆け上っていく音を聞いて一安心しあたしもまた、不安と期待に鼓動を早くさせる。






ガチャ、り

いつからこの音に恐怖を覚えるようになったのだろう



「た、だ、い、ま。」

「お、おかえりなさい。」



母親が帰ってきた
それはきっと幸せな瞬間


あたしも昔はそうだった
記憶なんてもう薄れるほどあれから時は経ってしまったけれど








「はい、これ…3千円あれば足りるでしょ。アタシこれから出かけるから適当に買って食べてちょうだい」

「あ、ありがとう」


よかった
今日は機嫌が良いらしい


きっと夜は…






「あら、チビは?」

「へ、部屋で宿題をやってるみたいだよ。」

「あ、そう」

「う、ん。」


バクバク、と心臓が音を立てる
チビとは青のことだ。

青には、青にはもう何もしないで欲しい




そのまま興味が無さそうに
せかせかとバックに荷物をつめこむ母親を横目に本を読んでるふりをする
だけど一ページもめくれやしない

内容など頭に入ってきやしない




今はただ何事もなく時が過ぎ去るのを願うだけ。










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