一ノ瀬さん家の家庭事情。
あたしを見つけると、少し驚いたように目を丸くして、手を振ってくれる。

あたしも力なく振返す。

あたしたちは一番後ろのあいている席に座った。

「なに、お前の彼氏?」

久住君が優兄を見ながら言った。

「ううん、お兄ちゃん。」

「ふーん、兄貴いるんだ。」

優兄、あたし実行委員になっちゃったよ…

「そういえば一ノ瀬って部活とかしてないの?」

いまさら!?

そんなのね、してますとも!

「男子バスケ部のマネージャー。」

「バスケ部?」

ピクリとかすかに久住君の眉が動いた。

「久住君もバスケ部だったんでしょ?」

ほのちゃんに話すなって言われてたけど、やっぱり気になっちゃうもん。

「…まあな。もうやらねえけど。」

そういった久住君の横顔はなんだかとても苦しそうで。

「では、今から学祭実行委員を始めます。」

とてもじゃないけど、どうして?なんて聞き返せるような雰囲気じゃなかった。
< 114 / 391 >

この作品をシェア

pagetop