一ノ瀬さん家の家庭事情。
真兄の声も、聞こえないくらいにボーッとして。

「…一ノ瀬、また詳しくは後で。」

浅丘君はそう言うと、葉ちゃんたちの方に行ってしまった。

「愛、早くしろよ!俺、腹減って死にそうなんだよ!」

真兄に半ば引きずられるようにして家に帰った。

玄関のドアを開けるやいなや、あたしに抱きついてくるのはりっちゃん。

「愛ーーー!おかえり!会いたかったぞ!」

ほんと、りっちゃんはキャラぶれないよね。

「愛、おかえり。疲れただろ?風呂沸いてるから先に入りなよ。」

こちらはいい意味で本当にいつも優しい優兄。

「ありがと、でも多分真兄のほうが今日は疲れてると思うから…」

一応エースだし、誰よりも長く練習してたからね。

「そっか、なら愛から言ってあげて。」

え?

なんで?

「…うん。」

優兄、いつもなら自分で真兄に言うはずなのに、どうしてなのかな。

疑問を残したまま、ソファに寝転ぶ真兄に声をかける。
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