一ノ瀬さん家の家庭事情。
やっと今日、はじめて二人きりになれた。

前にも一度見たことはあるけど、あらためて私服姿の浅丘君はものすごくかっこいい。

ジーッとその横顔を見てると、浅丘君がこちらに目線を移して、バッチリ目があってしまう。

暗いから気が付かれないと思ったのに!

どうしよう、あたしは目線を泳がせる。

なのに、浅丘君はあたしをじっと見つめたまま。

どうして?

「あ、浅丘君、そんなに見つめられたら、あたし…」

「えっ、あっ!ごめん!私服姿の一ノ瀬、久々に見たから、かわいいって思って…って俺、何言ってんだろ。ごめんな!ほんと。」

嘘でしょ。

浅丘君が、あたしのこと、可愛いって言ってくれたの?

可愛いって…

可愛いって!!!

それからその言葉がずっと頭の中でリピートされてて、映画の間もずっと考えてて。

「愛ちゃん、映画面白かったね!」

「う、うん!」

見終わったあと、はるひちゃんにそう言われて返事に困るくらい、あたし集中できなかった。
< 166 / 391 >

この作品をシェア

pagetop