一ノ瀬さん家の家庭事情。
「だから!送って行ってやるって言ってんの!」

そう言うとそっぽを向いてしまった。

久住君って本当はすごく優しいんだよね。

私、知ってるよ。

「ありがとう。」

一人じゃ夜道は不安だし、ここはお言葉に甘えさせてもらおう。

自転車通学の久住君はわざわざ押して歩いてくれる。

「今日も部活、出れなかったな。」

「うん、きっとほのちゃんマネージャー一人で大変だよ。」

三年生のマネージャーだった先輩はすでに引退しちゃってるし…

「早く試合に出てえな。」

そんなことをポツリとつぶやいた久住君の横顔はどこか寂しげで。

「出れるよ!久住君、うまいもん。」

「ふーん…じゃあさ、」

そして急に、立ち止まった。

「俺と聡太、どっちがうまい?」

久住君の目は私をまっすぐ見据えていた。

なんでそんなこと、聞くんだろう。

「そんなの、わかんないよ…」

私、まだバスケの事よくわかってないし。

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