一ノ瀬さん家の家庭事情。
もしかして、二人でまわれるかも、なんてそんな夢みたいなこと、あるわけないのにね。

「遅いよ、一ノ瀬!もう開店するよ!」

教室に戻るとすでにみんな揃っていた。

「ごめんね!」

よし、いよいよ高校初めての文化祭の開幕です!


「お、お、お…かっ…」

「お帰りなさいませ、ご主人様。」

語尾にハートマークがつきそうなくらい可愛くお辞儀をする樹里ちゃんのとなりでどもりまくるあたし。

だってだって、恥ずかしいんだもん!

この格好だって樹里ちゃんの隣に並ばされてるだけで公開処刑みたいなものなのに!

「メイドさーん!」

へっ!?

あたし!?

じゅ、樹里ちゃんは…別のオーダーに行ってる!

仕方ない、こうなったら行くしかないよね…

「い、いらっしゃいませ…」

「へえ、この子が真の妹の愛ちゃんか!めっちゃかわいいじゃん!」

え?

メモから顔を上げると、そこに座っていたのは誰かにそっくり、でも誰だっけ?な人と、ものすっごく美形でかっこいい、ゴシップネタに疎いあたしですら知っている二年生ミスター代表、速水大和先輩、それから大柄な優しそうな人、そして…
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