一ノ瀬さん家の家庭事情。
あたしは顔をひきつらせながら、その腕をどかそうとした。

「一ノ瀬さん、かわいいよねー、俺、入学式で見た時からずっと可愛いって思っててさ!」

入学式で見た時からって入学式あったの、つい3日前じゃん!

「離してください!」

無理矢理その腕から逃げようともがくけど男の人の力には敵わない。

「いいじゃん!付き合ってよ。」

…なんだ、このチャラ男!

なーにが付き合ってみようよ!だ!

あたしは本当に好きになった人としか付き合わないっての!

「一ノ瀬さんってちっちゃくて可愛いなー、俺のモロタイプなんだ。」

そんなこと知るか!

しつこいし、こうなったら必殺のローリングスペシャルキックで…


「せんせー、入学早々女口説いてるみっともない奴がいまーす。」

突然掴まれてた腕が自由になり、そいつはぎょっとしたような目で何かを見た。

「お、お前は…い、一ノ瀬真…!」

「はいはーい、先輩に向かって呼び捨てはやめようねー。」
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