一ノ瀬さん家の家庭事情。
「じゃあさ、あの…」

暗闇の中で聞こえた、浅丘君の声。

それと同時に熱くなる右手。

なぜならそれは、浅丘君があたしの手を繋いだからで。

どうしよう!

こんなハプニングがあるなんて!

神様、ほのちゃん、ありがとう!!

これはいつも悪魔ブラザーズからいじめられているあたしに神様がお慈悲をくださったのかな!?

「こうすれば少しは怖くない?」

「…は、はい!」

怖さは薄れたけど、今度は別のドキドキがおさまらないよ!

あたしの手、手汗かいてないよね!?

手汗でびしょびしょな女の子なんて幻滅だよ!

「あ、もう出口だって。」

浅丘君が言う。

ホッとしつつも残念に思ってる自分もいる。

だってお化け屋敷を出たらきっとこの手は離されちゃう。

付き合ってもないのに図々しいよね。

本当に彼女になったら、こんなふうに当たり前みたいに手をつないで、一緒に帰るのかな…

いつか、あたしも浅丘君と…
< 200 / 391 >

この作品をシェア

pagetop