一ノ瀬さん家の家庭事情。
それにね、実は少しだけ葉ちゃんに感謝してる。

だって葉ちゃんの提案がなかったら、きっとこのまま浅丘君とは話せなかったもん。

その日の放課後、かばんに教科書を入れている浅丘君の席に勇気を振り絞り、向かった。

「あの、浅丘君!」

「一ノ瀬。」

久しぶりに真正面に立つと、ものすごく緊張するよ!

「あのね、今度の日曜、葉ちゃんがバスケ部のみんなで勉強会しようって言ってて…」

顔、まっすぐ見れない。

あたし、きっと変な顔してるもん…

「ごめん、今度の日曜は…ちょっと予定があって…」

気まずそうに語尾を濁す浅丘君。

そうだよね、突然誘われたらびっくりするよね。

「わかった!葉ちゃんに言っておくね。」

残念だけど、少しだけホッとしてる自分がいる。

だって今みたいに気まずい空気になるのは耐えられない。

もう元には戻れないの?

友達にすら、戻れないの?

あたしまだ浅丘君のこと、全然知らないよ。
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