一ノ瀬さん家の家庭事情。
そうだ。

文化祭のとき、あたしが浅丘君のことが好きってこと、久住君にバレてたんだっけ。

「ただ思いを伝えたかっただけだから。聞いてくれてありがとな。」

ただ思いを伝えたかっただけ、か…

その先のことばっかり考えて、気まずくなるのが嫌で、勇気が出ないあたしとは大違い。

強くて、優しくて、まっすぐで。

そんな久住君はあたしなんかを好きだって言ってくれた。

「一ノ瀬にも後悔はしてほしくないんだ。…最近、聡太と話してねえみたいだからさ。」

後悔したくないよ。

まだ何も伝えられてない、あたしの気持ち。

やっぱり、やっぱりこのまま終わりたくない!

「久住君、ありがとう…!あたし、勇気出す!」

「おう、それでこそ一ノ瀬。」

そうだよ、一生に一度の初恋。

後悔して終わりたくない。

きちんと思いを伝えて、きっぱり振られるんだ。

それできっと、あたしは前に進める。
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