一ノ瀬さん家の家庭事情。
玲とあたしは本当の双子じゃない。

最初はその事実を受け入れたくなかった。

今まで本当の兄弟だと思ってきたみんなのこと、その事実を嘘だと思いたかった。

「愛、行くよ。」

バケツに水をため終え、玲が言う。

あたしはその後ろ姿を見ながら思う。

「遅えよ、寒くて凍えるっつの。」

「じゃあ真兄が行けばよかったじゃん。」

「コラコラ、お正月から喧嘩しない!母さんたちに怒られるぞ。」

いつもの日常。

真兄と玲がくだらないことで言い争ってて、それを仲裁するりっちゃんがいて。

「愛、お線香。火に気をつけて。」

いつも優しい優兄。

あたしの、大切な家族。

「幸、唯、暁、今年も一年間仲良く元気でやれるよう、見守っててくれな。」

お父さんが手を合わせるのにあわせて、あたしたちも手を合わせる。

唯ちゃん、暁君、二人のことをお母さん、お父さんって呼ぶのにはもう少し時間がかかりそう。

去年一年間はね、いろんなことがあったんだよ。

高校に入学して、最初はなかなか馴染めなくて。
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