一ノ瀬さん家の家庭事情。
「…というわけで、愛はこのまま家で暮らします。」

ことは早いほうがいいと言って聞かないりっちゃんはその週の土曜日、さっそく先生の一人暮らしするアパートまで押しかけて報告しに行った。

「…とりあえず上がって。」

先生は変わらず穏やかな笑顔であたしたちを促した。

テーブルにお茶をおいて、それから椅子に座るとりっちゃんをまっすぐ見た。

「律君は平気なの?今、やりたいこととか、我慢してない?」

「してません。俺の一番望むことは家族で仲良く一緒に暮らしていくことですから。」

きっぱりとそう言ったりっちゃんの横顔はなんだかとてもかっこよく見えた。

「そっか、…愛ちゃんも、そのほうがいいんだよね?」

あたしは頷く。

みんなといっしょにいたい。

あたしもそれが一番の願いだよ。

「わかった。ごめんね、色々騒がせて。…俺も実際、羨ましかったんだ。楽しそうに家族で暮らす君たちが。」

先生は少しさみしそうに笑った。


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