一ノ瀬さん家の家庭事情。
先生もお母さんもお兄ちゃんもなくして、一人で暮らしてる。

「いつでもうちに来てください、俺達だって家族みたいなもんじゃないですか。」

りっちゃんの言葉に先生は顔を上げる。

「あたしも、また遊びに行っていいですか?」

もっともっと、仲良くなりたい。

だって純粋に嬉しかった。

おじいちゃんに会えたことも。

先生と会えたことも。

「もちろん、今度はみんなで来てね。色々ありがとう。」


帰り道、りっちゃんは珍しく黙ったまま歩いてる。

いつもならうるさいくらい話しかけてくるのに。

「…なあ、愛。」

そして突然口を開いた。

また真剣な表情。

「本当に、良かったんだよな?このまま家で暮らすこと。」

なんで、そんなこと聞くの…?

「あたしがみんなと暮らしたい!…ダメ?」

するとりっちゃんは首をブンブン振って。

「俺、まだまだ未熟だし、親父がいないときは俺がしっかりしなきゃって思ってて…それでもやっぱり周りから見たら頼りないのかなって。」
< 323 / 391 >

この作品をシェア

pagetop