一ノ瀬さん家の家庭事情。
「どうしたの?一ノ瀬。」

今日も爽やかで笑顔が素敵な浅丘君がこちらに歩いてくる。

それだけで心拍は二倍に速くなる。

「ほら、愛。がんばれ!」

ほのちゃんはニヤッと笑うと教室から出て行ってしまった。

取り残されたオドオド挙動不審なあたし。

「今日の英語の課題、難しかったよな。一ノ瀬、出来た?」

浅丘君があたしに気を遣ってくれてたのか、話題を振ってくれて少しだけホッとする。

「あたしもわけわからなくて、優兄に教えてもらったよ。多分合ってるはずなんだけど…」

あたしは机の中から英語のノートを取り出す。

文系の優兄は本当にこういう時に頼りになる。

玲や真兄に教えてもらおうものなら、好きなだけ罵倒されるプラスなにか見返りを求めてくるしね!

「ほんと?教えて!」

浅丘君がノートを覗きこんだ。

そしてぐいっと縮まる距離。

ち、近い!

「一ノ瀬?」

「あ、えっと…」
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