一ノ瀬さん家の家庭事情。
きっと漫画だったらあたしの顔からはプシューって音と一緒に湯気が出てるだろう。

「あっ、ごめん！俺…つい…」

浅丘君がばっと離れる。

「違うの！その…」

うまく言えない。

どう言えばいいのかな、こういうとき。

浅丘君と近づくのが嫌なわけじゃない。

むしろ嬉しいはずなのに、ドキドキしすぎて、その余裕がなさすぎる自分が恥ずかしいの。

こんなに毎日何気ないことでドキドキしちゃう自分が、恥ずかしくて。

きっと浅丘君はそんなに意識してないことでもあたしはすごくすごく意識しちゃってるんだもん。

一人だけ勝手にドキドキしてるのが、嫌なの。

浅丘君と二月十四日、バレンタインデーの日にめでたくお付き合いをすることになり、はや一ヶ月がたとうとしている。

彼氏と彼女という関係に未だになれないあたしは何気ないことで心臓が壊れてしまいそうな日々。

夜、好きな人からメールが来る。

たまに電話をする。
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