一ノ瀬さん家の家庭事情。

「おねえちゃん、恵海のランドセル見せてあげるー！」

恵海ちゃんはそう言うとバタバタとまた家の中に入っていってしまった。

「とりあえず上がって。」

っ！

いよいよ、浅丘君の家のなかに！

「ただいまー。」

「お、お邪魔しますっ！」

声が裏返っちゃうくらい緊張してる。

「いらっしゃい。」

玄関の向こうの扉が開き、出てきたのは綺麗な優しそうな女の人。

この人がもしかして…

「聡太の母です。はじめまして。」

「は、はじめましてっ！一ノ瀬愛です！」

ニコニコと笑う浅丘君のお母さん。

その笑顔は浅丘君の笑った時の顔に似ている。

浅丘君ってお母さん似なのかな？

「これ、つまらないものですが…」

手ぶらで来るのはさすがにまずいと思って、昨日の夜必死で作ったガトーショコラに継いで得意な紅茶のシフォンケーキ。

玲に三回味見してもらって大丈夫だったから、多分大丈夫なはず！