一ノ瀬さん家の家庭事情。
へ?

見るとあたしはいつのまにかお殿様に敬礼するようにお辞儀をしていた。

「で、電子辞書なら机の上!」

「はいはい、照れちゃって。兄ちゃん、ピュアなんでよろしくお願いしますね!」

性格は…

浅丘君とは違うみたい。

「涼太!」

「へいへーい!お邪魔しましたー!」

涼太君が行ってしまうと、浅丘君は大きくため息をついた。

「ごめん、騒がしくて…」

そういえばさっき、あたし、浅丘君と…

顔を見てたら思い出して恥ずかしくなってきちゃった!

それは向こうも同じだったみたいで、お互い顔を赤くして下を向く。

何やってるんだろう、あたしたち。

「…ごめん、大切にするって言ったのに…俺、なんか変だ。…やっぱり外行こう!」

浅丘君はそう言うと、立ち上がった。

大切にしてくれてる。

それがすごく伝わってくるの。

あたしはそんな彼の後ろ姿を見ながら心が暖かくなった。


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